平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社)

 家庭教師の仲介営業マンとしてしのぎを削る大学生。娘のパパ活を案じながらも、マッチングアプリに勤しむ中年男。不妊に悩んだ末、精子提供を始めた夫婦。リモート飲み会に興じる学生時代の腐れ縁。人気YouTuberを夢見る、島育ちの小学生四人組……。令和の「日乗」に潜む、かすかな違和感。そして狂気。あなたはその真相を見抜くことが出来るか。(粗筋紹介より引用)
 『小説新潮』2019~2022年掲載。2021年、「#拡散希望」で第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。2022年6月、新潮社より単行本刊行。

 家庭教師派遣会社のバイト営業担当スタッフとして働く、大学三年生の片桐。新しいアポは、新宿百合丘に住む小学六年生の男の子。約束の時間に尋ねてみると、母親と息子が待っていた。しかしどうも様子がおかしい。「惨者面談」。
 大学三年生の娘がパパ活をしているのではないかと疑りながらも、自らはマッチングアプリで持ち帰りをしている42歳の中年男。そして今日も、23歳のマナと会い、二軒ハシゴした後、彼女の家に行くことになった。「ヤリモク」。
 苦労の末、ようやくできた娘の真夏。その二年後、私は妻公認のうえ、あえて素性を明かしたうえで精子提供を行った。それから15年後、岐阜に住んでいるという中学二年生の「娘」が私のもとを訪れてきた。「パンドラ」。
 学生時代の友人である茂木、宇治原とリモート飲み会を行うことになった桐山。楽しい会話が続いたが、そのうち宇治原が、遠距離にいる婚約者が浮気をしていると言い出す。「三角奸計」。
 長崎市の西の沖合八十キロに位置する小さな匁島。小学校は一つだけ、全校生徒は同学年のわずか四人。そのうち三人は、親とともに東京から移住してきた。小学三年生の夏休み、唯一島生まれの立花凛子がiPhoneを買ってもらい、三人に見せていた。そして将来は、島育ちの男女四人でYouTuberになろうと話し出す。「#拡散希望」。

 ベストセラーになった一冊。時代を投影した題材を取り上げ、そのいずれもにおかしな点があることを登場人物、そして読者も気付く。読者が予想できる結末になるかと思ったら、最後にどんでん返しを食らわせる短編5本。同じパターンになるかと思ったら、いずれも違うパターンでどんでん返しを用意しているところはうまい。特に「#拡散希望」は怖いね。
 文章も読み易いし、テンポもよい。この短さでのドンデン返しは、テレビよりもYouTube、それよりもショート動画やTikTok、というようないい意味でのお手軽さを感じる。題材だけでなく、その手に取りやすさも現代的な短編集と感じた。年寄りの自分には、もうちょっと書き込みが欲しいという物足りなさを感じたが。