平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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五十嵐貴久『相棒』(PHP文芸文庫)

 時は幕末、京の都――。大政奉還を目前に控え、徳川慶喜暗殺未遂事件が起こった。幕閣から犯人探索の密命を受けたのは、坂本龍馬新選組副長土方歳三。しかし二人に与えられた時間は、わずか二日間だった。いがみ合い、衝突しながら捜査を続ける二人が最後に行きついた人物とは? そして龍馬暗殺の真相を知った土方は? 幕末維新のオールキャストでおくる、傑作エンタテインメント長篇小説。(粗筋紹介より引用)
 2008年、PHP研究所より単行本刊行。2010年10月、文庫化。2022年には『幕末相棒伝』のタイトルで、NHK総合「正月時代劇」枠で放送された。

 歴史ものにifはつきもの。NHK大河ドラマ新選組!』では坂本龍馬近藤勇土方歳三と多摩で友人だったという設定になっているが、本作は不俱戴天の敵でる坂本龍馬土方歳三徳川慶喜暗殺未遂事件の犯人探索に向けて手を組む、というストーリーである。
 仲の悪い二人が同じ目的に向かって進むうちに互いを理解する、というのはまさに王道。解説の青木逸美は、ウォルター・ヒル監督のアメリカ映画『48時間』(エディ・マーフィの映画デビュー作)が下敷きになっていると書いている。それが人気の高い坂本龍馬土方歳三ならなおさら。架空の事件、設定でこそあるが、登場人物は幕末に活躍した人がほぼフル登場と言っていいラインナップであるし、史実にも忠実に沿っているため、満足度は非常に高い。徹底したエンタテイメント追及の作品であり、幕末ファンが望んだifストーリーも挟みつつ、結末まで淀みなく進む楽しさは見事といっていい。
 ライトな幕末ファンでも楽しめる一冊。史実と違うじゃないか、とこの手のifストーリーを嫌う人にも一度は手に取ってもらいたい。娯楽性という意味では一級品である。