平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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小学館ドラえもんルーム編『藤子・F・不二雄がいた風景』(小学館)

 藤子・F・不二雄先生の生誕90周年を記念し、先生の生前の人柄に迫った究極の一冊がついに登場!
 国民的漫画家、藤子・F・不二雄とは、いったいどういう人物だったのか。その素顔に、全4章立てで迫ります。
第1章「Biography」:藤子・F・不二雄生誕から、年代ごとに足跡をたどる。数々の名作誕生の背景を徹底紹介。
第2章「Memories」:伝説のトキワ荘で日々を共にしたアニメーターの鈴木伸一・まんが家の水野英子や、当時の担当編集者・アシスタント、初期ドラえもんアニメのプロデューサー、初期映画ドラえもん監督など、当時の関係者が語る、藤子・F・不二雄
第3章「Works」:筆跡が色濃く残る原画を中心としたイラスト集。作品構想メモや下絵も掲載。のび太の未来の姿が描かれた「45年後」も1編まるまる掲載。
第4章「Favorite」:藤子・F・不二雄の好きなもの特集。仕事道具、本棚、世界旅行記、家族との思い出などを徹底取材。(粗筋紹介より引用)

 2024年11月刊行。

 藤子・F・不二雄生誕90周年を迎えて刊行された、藤子・F・不二雄バイオグラフィー。インタビューと写真と創作ノート、生原稿が中心。ただ、付録や文庫本装丁、舞台劇のキャラクターデザイン、カレンダーなどは貴重。『手塚治虫 イラストコレクション』『手塚治虫大人漫画大全』みたいにイラストや1コマ作品などもまとめてくれないかな。
 インタビューは鈴木伸一水野英子ヨシダ忠を除くと編集者、映画関係者が中心であるためか、礼賛が多い。『ドラえもん』がヒットするまでの低迷時期、もうちょっと苦悩するところの話なんか聞いてみたかったけれどね。これは仕方がないか。
 高円宮殿下との対談再録は結構貴重。殿下は意外と漫画ファンで、藤子A(安孫子素雄)との合作やコンビ解消の話まで突っ込んでいたのには驚いた。藤子Fが、「『まんが道』のように、リアルな漫画は僕には描けません」などと語っているのは珍しいと思う。また『オバケのQ太郎』を描くきっかけが、自身の結婚式におけるつのだじろうのスピーチというのも初めて聞いた気がする。『ウメ星デンカ』も気になって読んでいたという話は笑ってしまった。
 ただ藤子F本を読むと、あまり安孫子について語られていないことが気にかかる。藤子A本では必ず語られているのとは対照的だ。藤子Fによる藤子Aエピソードをもっと読んでみたかった。
 もう新作は望めないが、まだまだ語られない藤子Fはあるだろう。小学館にはこれからも頑張ってほしい。