被疑者を射殺してしまったことで、一週間の自主謹慎に入った刑事の獅堂は、故郷の村を訪れている。突然、学ランの少年・香島が、彼の慕う人物が殺人事件の犯人として容疑をかけられている、と救いを求めてきた。殺人の一部始終が記録されている証拠の映像は、紫水晶の中にあり、自分たちはその水晶を研究している〈星詠会〉の研究員であると語るのだがーー。(粗筋紹介より引用)
2018年10月、光文社より書下ろし刊行。2021年10月、文庫化。
作者の第二長編。紫水晶に映った未来を見ることができる「星詠師」たちが集まった研究施設「星詠会」で、創設者である石神赤司が死亡。警察は自殺と判断した。しかし「星詠会」では、水晶の中に殺人場面が映っていたことから、息子の石神真維那を犯人と断定。真維那を慕う少年・香島は、犯人射殺で自主謹慎中の刑事・獅童と知り合い、真維那の冤罪を晴らしてほしいと頼む。
星詠師という未来を見ることができる力を持った人物が登場する特殊設定ミステリ。この「星詠会」が立ち上げられるまでのストーリーを途中で織り交ぜながら獅童の捜査が進むのだが、この「星詠会」立ち上げにかかわる人物の心理描写が不足していて、行動が唐突に感じる。それにこの石神赤司が殺される未来、簡単に回避することができるんじゃないか。舞台や人物の立ち位置を変えることなど、それほど難しくないだろうに。
最後の犯人にたどり着くロジックは作者がかなりこだわったのではないかと思うのだが、力が入り過ぎていて空回りしている。読んでいて、楽しいものではない。もう少しリズムを付けられれば良かったのだろうが、長編に作目でそれは難しかったか。
なんとなく清水玲子『秘密』に近いな、と思いながら読んでいた。残念ながら、そこまでの面白さはなかったが。まあ、若さゆえの空回りだな、これは。