平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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道尾秀介『いけない』(文春文庫)

 ①まずは各章の物語をお楽しみください。②各章の最終ページには、ある写真が挿入あsれ亭ます。③写真を見ることで、それぞれの”隠された真相”を発見していただければ幸いです。──ラスト1ページ、あなたの読んでいた物語はがらりと姿を変える。騙されてはいけない、けれど、絶対に騙される。2度読み必至の驚愕ミステリ。(粗筋紹介より引用)
 『オール讀物』他掲載作品に書き下ろしのエピソードを加え、2019年7月、文藝春秋より単行本刊行。2022年8月、文春文庫化。

「第一章 弓投げの崖を見てはいけない」自殺の名所が招く痛ましい復讐の連鎖。
「第二章 その話を聞かせてはいけない」少年が見たのは殺人現場? それとも……。
「第三章 絵の謎に気づいてはいけない」新興宗教の若き女性幹部。本当に自殺か?
「終 章 街の平和を信じてはいけない」そして、すべての真実が明らかに……。(帯より引用)

 本書の舞台である蝦蟇倉(がまくら)市は、第一章が掲載された競作アンソロジー『蝦蟇倉市事件』(東京創元社)からである。
 最後の1枚の写真で、物語の構図をひっくり返す。最後に写真を使うというのは過去にもある趣向だが、各章が最後につながるのは大した技巧だな、とは思った。ただ、文字ではなくあえて写真を使うことの方が驚きを増した、というのは第三章と四章ぐらいかな。他の作品では、写真を使うメリットはあまり感じなかったね。
 そもそも物語が暗すぎるので、写真を使うというゲーム性を足されてもピンと来ない。何も無理に技巧にこだわらなくても、と思う。期待外れの一冊でした。