平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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久住四季『星読島に星は流れた』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)

 天文学者サラ・ディライト・ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年、天体観測の集いを開いていた。ネット上の天文フォーラムで参加者を募り、招待される客は毎年、ほぼ異なる顔ぶれになるという。それほど天文には興味はないものの、家庭訪問医の加藤盤も参加の申し込みをしたところ、凄まじい倍率をくぐり抜け招待客のひとりとなる。この天体観測の集いへの応募が毎回凄まじい倍率になるのには、ある理由があった。孤島に上陸した招待客たちのあいだに静かな緊張が走るなか、滞在三日目、ひとりが死体となって海に浮かぶ。犯人は、この六人のなかにいる――。奇蹟の島で起きた殺人事件を、俊英が満を持して描く快作長編推理!(粗筋紹介より引用)
 2015年3月、書下ろし刊行。

 

 『トリックスターズ』シリーズで本格ミステリファンの一部から注目を浴びていた作者による長編推理。なんとなく読みそびれていたが、正月休みで引っ張り出してきた。
 『トリックスターズ』に比べると、非常にスタンダードで読みやすい本格ミステリ。なぜ孤島に集まるかという設定が面白い。これは全く知らなかった。殺人事件が起きる展開は定跡通りのもので、どことなく基本に忠実、という感じがする。東京創元社に書くから、あえてそうしたという気がしなくもない。
 探偵役の加藤盤のどこがいいのだかはわからないが、お決まりのロマンスがあるところはやや軽さを感じる。35歳のオッサンという設定にしなくてもよかったと思うのだが。
 ただあまり波乱もなく、呆気なく最後まで進んでしまったのはいいのか、悪いのか。後味爽やか、で終わってしまうのはちょっと勿体なかった。