平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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東山彰良『流』(講談社)

 1975年、偉大なる総統蒋介石の死の翌月、愛すべき祖父・葉尊麟は何者かに殺された。いったい誰が殺したのか。内戦で敗れ、追われるように台湾に渡った不死身の祖父。無軌道に生きる17歳の葉秋生には、まだその意味はわからなかった。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ! 友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。(BOOKデータサービスより引用、一部追記)
 2015年5月、講談社より書下ろし刊行。同年、第153回直木賞受賞。

 

 台湾を舞台にした青春小説。主人公は台北の高等中学に通う17歳の葉秋生。一応祖父の殺害の謎を追うという芯はあるものの、内容としては不良である秋生の成長物語の要素が強い。学校をさぼり、悪友と遊び、喧嘩に明け暮れ、幼馴染との恋模様。秋生は成長し、経験を重ね、別れと出会いを繰返し、そして再び祖父の死の謎を追う。青春小説、成長物語と書いたが、一族の大河物語としても読むことができる。台湾、日本、そして中国を舞台にした、スケールの大きな作品。テンポがよく、ユーモアもあり、しかも骨太。文章が跳ね、うねり、そして壮大に広がっていく。
 登場人物が台湾人ばかりで、舞台も台湾が中心ということもあり、登場人物の名前を覚えるのに一苦労した。しかし物語に没頭すれば、そんなことを気にならなくなるだろう。
 これまた今頃手に取った一冊だったが、傑作だった。直木賞受賞も当然の結果だっただろう。