平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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連城三紀彦『どこまでも殺されて』(新潮文庫)

「どこまでも殺されていく僕がいる。いつまでも殺されていく僕がいる」 七度も殺され、今まさに八度目に殺されようとしているという謎の手記。そして高校教師・横田勝彦のもとには、ある男子生徒から「僕は殺されようとしています。助けて下さい」という必死のメッセージが届く。生徒たちの協力を得て、殺人の阻止と謎の解明に挑む横田。周到な伏線と驚愕の展開に彩られた本格推理長編。(粗筋紹介より引用)
 『小説推理』に前後編に分かれて掲載。1990年5月、双葉社より単行本刊行。1993年6月、双葉文庫化。1995年8月、新潮文庫化。

 

 冒頭から七度殺され、もうすぐ八度目に殺されるという謎の手記で始まる。舞台は高校へ飛び、高校教師の横田は、クラスで一番人気の女子生徒苗場直美らと協力し、助けてほしいというメッセージを伝えた男性生徒を探り出す。
 驚きの手記ではあるが、当然七回も殺されるなどという話があるはずもない。物語がどう進むのかと思っていたら舞台は高校へ飛び、今度は殺されるというメッセージの送り主を担任教師とクラスの女子高生が探し続ける。
 有り得ないはずの手記と、殺されるかもというメッセージの送り主を探し出すという二つの流れがどうつながるのだろうかと思いながら話は進むのだが、手記と高校舞台の話のトーンが今一つ噛み合わず、読んでいてもどかしさを感じた。それは結末まで読んでも変わらず。確かに二つの話の繋がり方は巧さを感じるが、テクニックでごまかしている感が強い。女子高生たちがあまり動揺もせず謎解きをするということに違和感があった。無理して学園ミステリを書いている、という気にさせられた。
 連城ならもう少しひねりを入れて書けるはずなのに、と思ってしまう。具材に調味料が入っていない料理を出された感が強い作品であった。具材はおいしいから、何とか読めたけれど。