高校生のピップは、友人のコナーから失踪した兄の行方を捜してくれと依頼される。兄のジェイミーは、2週間ほど前から様子がおかしかったらしい。コナーの希望で、ピップはポッドキャストで調査の進捗を配信し、リスナーから手がかりを集めていく。関係者へのインタビューやSNSなども丹念に調べることで、少しずつ明らかになっていく、失踪までのジェイミーの行動。ピップの類まれな推理が、事件の恐るべき真相を暴きだす。年末ミステリランキング第1位『自由研究には向かない殺人』続編。この衝撃の結末を、どうか見逃さないでください!(粗筋紹介より引用)
2020年、発表。2022年7月、邦訳刊行。
イギリスの小さな町にあるリトル・キルトン・グラマースクールの最上級生であるピッパ(ピップ)・フィッツ=アモービを主人公にした三部作の二作目。前作『自由研究には向かない殺人』から数か月経った4月から物語は始まる。
友人であるコナー・レノルズの兄、ジェイミーが失踪し、コナーはピップに行方を探して欲しいと依頼する。前作で自分だけでなく周囲も傷つける結果となったことから、一度はピップも断る。しかし事件性がないことから警察は取り合ってくれないし、ピップがホーキンス警部補に頼んでもだめだった。仕方なくピップは、ポッドキャスト「グッドガールの殺人ガイド」を通し、手掛かりを集めていく。
まあ誰もが書くだろうが、最初から前作の真相が書かれているので、必ず『自由研究には向かない殺人』を読んでから本作を読むこと。ミステリでそれはないだろうと言いたいところだが、このネタバレがないと物語としては弱くなってしまうし、作者が描こうとする姿には欠かせない部分であるため、仕方のないところである。
前半は地味な展開が続くけれど、ポッドキャストなどのSNSを通すという形が意外といいアクセントになっていて、読んでいても飽きが来ない。ただ、捜査はなかなか進展せず、もどかしさも残る。ところが終盤になって展開が予想外の方向に進み、事件の恐るべき真相が浮き彫りになってくる。これはお見事。いやあ、驚いた。読み返してみると、ここに伏線が張ってあったのかと気付かされ、さらに感心した。
元々ジュブナイルとして書かれたこともあってだろうが、青春物語としても、成長物語としても読むことができる。大人の汚い一面も見せられるし、社会の厳しい視線も浴びせられる。それでも立ち向かおうとするピップの強さはいったいどこにあるのだろう。
事件こそ解決されるが、ピップがどう成長するのか、非常に気になってしまう。三作目が待ち遠しい。前作込みで読むこと、という条件付きで傑作だと思う。前作より断然面白い。そして次作が待ち遠しい。三部作すべてを読んで、また評価が変わってしまうのかもしれないが。