平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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デズモンド・バグリイ『敵』(ハヤカワ文庫NV)

 英国の某情報部に勤務するジャガードは聡明な生物学者ペネローペ・アシュトンと婚約した。だがその幸福もつかの間、彼女の妹が何者かに硫酸を投げつけられるという事件が発生する。ジャガードは犯人の捜査を開始するが、やがて奇怪な事実を探り当てた。ペネローペの父ジョージ・アシュトンの経歴が情報部で最高機密になっているのだ! 黒い噂ひとつない富裕な実業家の彼がなぜ? 謎が深まる中、突然アシュトンが失踪した。情報部の命を受けたジャガードは彼を追って厳寒のスウェーデンへ飛ぶが……バグリイ自身が最高傑作とする大型冒険小説。(粗筋紹介より引用)
 1977年、英国で発表。作者の第十一長編。1981年2月、早川書房より邦訳、単行本刊行。1986年4月、文庫化。

 

 バグリイは『高い砦』しか読んだことが無い。帯で「著者自身が最も好きな作品にあげている」と書いていたので、手に取ってみた。
 主人公のマルコム・ジャガードはイギリスの諜報部員が、失踪した婚約者の父親、ジョージ・アシュトンを追いかける、という話だが、実はアシュトンの過去は、イギリスの最高機密であった。失踪したアシュトンを追いかけてスウェーデンに飛ぶマルコム。まあ、そこまでは楽しんで読むことができたのだが、全く考えてもいない展開に進んでいき驚かされた。しかもその展開があまり面白いものではない。婚約者の父親の行方を捜してピンチを救う、という展開だと思っていたのに、その裏に隠された真相が明後日の方向を向いているのだ。
 なんというか、読みたかった冒険小説はこういう方向じゃないんだよな、という感じ。こんな終わり方でいいんだろうか。作者、迷走していないか、と聞きたい。そりゃディティールとかはよく描かれているし、迫力や緊迫感はあるところはさすがだと思ったけれど。