平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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若竹七海『錆びた滑車』(文春文庫)

 女探偵・葉村晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重傷を負い、記憶を失ったミツエの孫ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する――。大人気、タフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。(粗筋紹介より引用)
 2018年8月、書下ろし刊行。

 

 「仕事はできるが不運すぎる女探偵」葉村晶シリーズ第五作となる書き下ろし長編。
 尾行中に喧嘩中に階段から落ちてきた二人に巻き込まれ、怪我をする葉村。冒頭から不運としか言いようがない。おまけに建て替えのためにシェアハウスを引越ししなければならない。その後も色々と不運な出来事に巻き込まれ、挙句の果てに報酬を超えた働きを続けなければならない。怪我も負って散々で、さらに胸糞悪くなるような事件に挑む羽目になる。不運の連鎖が続くと、作者に嫌われているとしか思えない(笑)。
 タフな葉村の活躍と苦悩を描き続けているこのシリーズだが、本作は本当に最悪最低な事件。前半に関しては、読む面白さよりも内容の腹立ちの方が強くて、読み続けるのに苦労した。結末まで読んで、事件が解決しても、何も救いがないというのは本当につらい。だけど、読んでいると面白いし、葉村晶に共感してしまう。そこがやっぱり、作者の腕なんだろうとは思う。
 飛び飛びで読んでいるので、ここらでシリーズの残りの作品を読んでしまおうかとは思っているのだが、ここまで苦みが心に残ってしまうのもちょっとなあ。