平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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法月綸太郎『挑戦者たち』(新潮社)

 J・Jの奇妙な挑戦、二代目フゴゥ刑事、皇帝の新しい服、ヒルベルト・ホテルの殺人……。パロディありクイズあり迷路あり。レーモン・クノーに触発されて、古今東西の名作エッセンスに彩られたミステリ万華鏡。ブッキッシュな仕掛けと洒脱な文体遊戯。ミステリ読者悶絶! 史上初、そして最後の試み。「さて、この面白さがどこまでわかるかね」。(帯より引用)
 『小説新潮』2014年5月号、2015年1月号、9月号、2016年2月号掲載。十一章の書き下ろしを加え、2016年8月、刊行。

 

 「読者への挑戦状」を様々な文体、形式で書き連ねた、計99編。文体模写、パロディ、クイズ、迷路など様々な方法で読者への挑戦状が書かれている。帯に出てくるレーモン・クノーとはフランスの詩人、小説家。『文体練習』という作品は1つのストーリーを99通りの異なる文体で描いており、本作品はそれに触発されたものである。
 まあ、こんなばかばかしい試みを実際に試すのは法月ぐらいだろう。逆を言えば、ミステリに詳しくなければこれだけのものは書けないとも言える。「読者への挑戦状」に対する批判への反論などもさりげなく含まれているところは面白い。巻末には引用、参考文献も載せられているので、何を元ネタにしているかを考えながら読んでみるのも面白い。
 ただ、こんな作品、すれっからしのミステリマニアでもなければ読まないだろう。ある意味、お遊び本。この手の本は、これっきりにしてほしい。これを雑誌に掲載した新潮社も、大したものである。

 

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