平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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紙城境介『僕が答える君の謎解き2 その肩を抱く覚悟』(星海社FICTIONS)

 明神さんの推理が間違ってるかもって、少しも思ってないでしょ?
 生徒相談室の引きこもり少女・明神凛音は真実しか解らない。どんな事件の犯人でも神様の啓示を受けたかのように解ってしまう彼女は、無意識下で推理を行うため、真実に至る論理が解らないのだった。臨海学校に参加する凛音の世話を焼く伊呂波透矢だったが、ふたりは深夜に密会していた疑惑をかけられてしまう。立ちはだかるのは35人の嘘つきたち。誰も信じてくれない凛音の推理を、透矢は証明することができるのか──。
 本格ラブコメ×本格ミステリ、恋も論理も大激突の第2弾!(粗筋紹介より引用)
 2021年9月、書下ろし刊行。

 

 期末試験で赤点を取りそうな紅ヶ峰亜衣に頼まれ、勉強を教えることになった伊呂波透矢。頭がよく、教え方もうまい透矢。明神凛音は透矢に乗せられ、教室で試験を受けることとなる。試験初日の三時限目、化学の試験が終わったと思ったら、教師が亜衣の椅子の下に落ちているノートの切れ端を見つける。そこにはアボガドロ定数が書かれていた。カンニングは全教科試験失格。当然亜衣には心当たりがない。ところが凛音は愛の友人が犯人であると指摘。しかし根拠がない。透矢は10分でその証拠を見つけることとなる。「第4話 地雷さんとドアの向こう」
 8月、三泊四日の臨海学校。引きこもり状態の凛音も無事に参加。透矢のことが好きな亜衣は、色々と凛音の世話をする。初日の夜、透矢は騙されて女子棟に入ることに。消灯時間が過ぎたが、何とか教師たちにばれることなく逃げ出すことができた。しかし次の日の朝、一年七組の生徒全員が教師に集められ、誰かが男子棟から女子棟に向かった、海岸に往復した足跡の証拠があると言われた。誰か名乗り出ろと言われたとき、凛音はある男子が犯人であると訴えた。「第5話 一年七組とたった一人の正直者」。

 

 『僕が答える君の謎解き』シリーズ第二弾。無意識化で推理を行うため、真実に至ることができた論理がわからない明神凛音。その推理を推理する伊呂波透矢。透矢への恋心に気づいた紅ヶ峰亜衣。今回は新たにクラスの学級委員でまとめ役の和歌暮諏由が重要人物として登場。まあありがちなライトノベル恋愛模様が面白くなってきたことは確か。ただ透矢たち、気まずくならないのか、色々と。
 それでもって推理の方は、前作よりもさらに面倒(苦笑)。特に第五話は、タイトルにあるとおり正直者が一人しかいない。事件そのものは学園ならではの小さな出来事だが、そこで繰り広げられる推理は本格ミステリの名にふさわしい。ただ、本当に推理が合っているのかどうか、検証する気になれないぐらい長いのだが(苦笑)。
 ということで、次の作品も楽しみになってきた。とはいえ、三年間この調子で書かれたら、やってられないな、と思うのも事実ではある。