娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが――。展開の読めないエンターテインメントでありながら、死に対峙した人間の弱さと強さを浮き彫りにする傑作長編。(粗筋紹介より引用)
2013年7月、単行本刊行。2016年7月、文庫化。
2005年に発表された短編集『死神の精度』の死神、千葉が長編で登場。まさかこの設定が長編になるとは思わなかった。
マスコミによる被害者への過剰な取材、被害者と加害者の関係、サイコパスな殺人者、裁判などの社会的な問題が散りばめられつつ、“死神”である千葉の言動がどこか頓珍漢ながらも、我々の“常識”へ一石を投じている形になっているのは面白い。作者にそんな意図はないだろうけれど。ただ、くどさを感じたところもあったので、ちょっと長すぎたかな。
最後は怖い結末だったが、あえてこれも作者が一石を投じたのかな。