平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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石持浅海『君が護りたい人は』(祥伝社 ノン・ノベル)

  成富歩夏が両親を亡くして十年、後見人だった二十も年上の奥津悠斗と婚約した。高校時代から関係を迫られていたらしい。歩夏に想いを寄せる三原一輝は、奥津を殺して彼女を救い出すことを決意。三原は自らの意思を、奥津の友人で弁護士の芳野友晴に明かす。犯行の舞台は皆で行くキャンプ場。毒草、崖、焚き火、暗闇……三原は周到な罠を仕掛けていく。しかし完璧に見えた彼の計画は、ゲストとして参加した碓氷優佳によって狂い始める。見届け人を依頼された芳野の前で、二人の戦いが繰り広げられる――。(粗筋紹介より引用)
 2021年8月、書下ろし刊行。

 

 碓氷優佳シリーズ最新刊。著者の言葉に「第5の事件」とあるし、ちらしにも「シリーズ第5弾」とあるのだが、高校時代の短編集はシリーズに入っていないのか、などと思ってしまった。
 殺人計画を、ある意味見守る立場による人物の視点で進む作品。珍しいといえば珍しいが、逆に描き方が難しい。変な意味で、神の視点に近い立場になっている。それがうまくいったかどうかと言われたら、残念ながら今一つだったといえるだろうか。
 碓氷優佳が完璧すぎて面白くない、ということもあるが、それ以上に犯人である三原一輝のあまりにも独善とした考え方が、作品を読んでも面白くないものになっている。いくら年齢差があるからといって、あれだけイチャイチャしているカップルを見て、自分の考え方が間違っているとは思わないのだろうか。まあ、恋に盲目な人は、自分の思う方向にしか考えられないのだろうが、逆に今まで何も手を出さなかったのも変な話。はっきり言ってバカじゃないか、と思ってしまうので、全然同調できないんだよな。そこらへんが書き込み不足なイメージを持たせて、損をしている。
 それにしても、結婚しているのに名前すら全然出てこない碓氷優佳の旦那。何か裏があるのじゃないかとずっと思っているのだが、数年に一度の長編ペースじゃ、細切れ過ぎる。