平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』(早川書房)

楽園とは探偵の不在なり

楽園とは探偵の不在なり

 

 二人以上殺した者は"天使"によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。細々と探偵業を営む青岸焦(あおぎしこがれ)は「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱(つねきおうがい)に誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。かつて無慈悲な喪失を経験した青岸は、過去にとらわれつつ調査を始めるが、そんな彼を嘲笑うかのように事件は続く。犯人はなぜ、そしてどのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。最注目の新鋭による、孤島×館の本格ミステリ。(粗筋紹介より引用)
 2020年8月、書き下ろし刊行。

 

 全く聞いたことのない作者だったが、帯を見て購入。2016年に第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞してデビューしたとのこと。
 二人殺せば地獄に落ちる世界で連続殺人をどうやって行うのか。無理難題のように見えるのだが、結局はルール設定をどのようにするか、ということでしかなく、後は作者がどのようにカモフラージュしながら書いているかを楽しむことになる。
 個人的には探偵役の青岸焦が気に入らない。2人以上殺せば犯人は天使によって地獄に引きずり込まれるのだが、1人殺したって罪は罪である。何も連続殺人、大量殺人を解くばかりが探偵の仕事じゃないだろう。もちろん青岸の過去がやる気をなくしている要因なのだが、あまりにも引きずりすぎ。なんかその時点で感情移入ができなくなってしまった。
 それにしてもこのルール、確かに適用可能なのだが、反則じゃないか、と思ってしまった。まあ、作者が設定した問題に対し、一つの解を示した、そんな作品。せっかくの設定、もっと使いようがあったと思うけれどね。