平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ザ・グレート・カブキ、タイガー戸口『毒虎シュート夜話 昭和プロレス暗黒対談』(徳間書店)

  「お前は戸口じゃなくて大口だ!」カブキの毒霧に、たじろぐタイガー戸口――日米マット界の裏と表を生きた同世代の2人の「記憶」は、きれい事だけで作られた「記録」よりも濃厚な昭和プロレスの闇に染まっていた!(帯より引用)
 2019年7月、刊行。

 

 ザ・グレート・カブキが店主を務める「BIG DADDY 酒場 かぶき うぃず ふぁみりぃ」に、日本プロレス時代の後輩であるキム・ドクことタイガー戸口が来店し、当時のプロレスを語り合った、対談形式の一冊。構成の原彬が「本人たちの記憶は、史実と違う部分もある」と語る通り、史実と異なる部分もあるだろうが、本人たちの大法螺(特に戸口はビックマウスで知られる)も含め、楽しむのが粋というものだろう。
 アントニオ猪木ジャイアント馬場、それに馬場元子の悪口が多いのは、金や待遇に泣かされてきた彼らにとっては仕方がないだろう。海外の自慢話も、特にカブキについてはわからないでもない。実際、一世を風靡したと思うし。他にもサムソン・クツワダが小指を飛ばしていた話はちょっと怖かったな。百田義浩がマフィアに沈められそうになった話とかも。多分色々なところで語られているのだろうが、私は初めて読む話だったので。
 戸口はWWFも長かったが、そのほとんどがジョバーだったと思うのだが。鶴田とのシングルマッチはよかったけれどね。馬場・鶴田vs大木・キム・ドク時代は盛り上がっていたね。動ける鶴田とキム・ドクで試合を作っていたから。新日本に行ってからはほとんど目立たず(年末のタッグリーグ戦で準優勝したぐらいか)、WARなどではキノドクと揶揄されていたぐらいだし。あんないい体をしていたのに、もったいない。
 カブキも登場シーンは良かったけれど、やっぱり飽きが来ちゃうよね。勝利パターンはトラース・キックから、とても効いているとは思えない正拳突きだったし。地方巡業や、アメリカのように転戦すれば別だっただろうけれど。
 ハイスパート・レスリングや四天王プロレスなどを見ると、彼らのプロレスがスローモーで楽しめない、という意見が起きるのもわかる。その辺はプロレスに対する価値観としか言いようがない。
 盛っている話も結構あるだろうけれど、まとめて読むとやはり楽しい。日本の団体内で活躍していたプロレスラーとは、見る視点が異なるので。