平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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結城真一郎『プロジェクト・インソムニア』(新潮社)

プロジェクト・インソムニア

プロジェクト・インソムニア

  • 作者:結城 真一郎
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  「年齢・性別・属性の異なるメンバーが夢のなかで生活を共にする」。特殊睡眠導入剤〈フェリキタス〉の開発で莫大な財を成した、ソムニウム社による極秘人体実験、〈プロジェクト・インソムニア〉。被験者に選ばれた蝶野は、失意の日々から一転、自らの願望を具現化できる〈夢〉の世界に魅了されてゆく。しかし、とある〈疑念〉の発露が、完全なる理想郷を、突如おぞましい悪夢へと変貌させる。ここは夢か、それとも―――。蝶野のかつての盟友、蜂谷が囁く。「聞いたことないか? 夢の中で死ぬと、現実でも死ぬっていう都市伝説」。世間を震撼させたバラバラ殺人事件、消えた天才ピアニスト、口径が合わない大量の銃弾、そして、終わらない殺害予告。幾重にも張り巡らされた〈悪意〉の連鎖が前代未聞の惨劇を呼び起こす。期待の俊英による新感覚ミステリ。(帯より引用)
 2020年7月、書き下ろし刊行。

 

 作者は2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞してデビュー。本作は受賞後初の長編。
 前作を読んでいないので、作者は初めて。評判がよさそうだったので読んでみたのだったが、読み終わってみるとちょっと微妙。
 SF設定の特殊状況下での殺人事件。ある意味ルールを作者が好き勝手に決められるので、よほどうまく書かないと設定の説明ばかりで嫌になるし、仕掛けをうまくしないと読者は納得いかないだろうが、そこらはクリアしているかな。ただ、「もしあれがああだったら、どうするんだ?」と思った通りのネタだったので、がっくり来たというのが正直なところ。誰もが一度は考えないか? ネタをわかっていても面白い、というのが理想なのだが、そこまでの域には達していなかった。そもそも、文章がちょっと読みにくい。エピローグはちょっと良かったが。
 こういうミステリを読むと、作者にお疲れさまでした、と言いたくなるのだが、それ以上の感想はない。