かつて新聞社編集委員の残間が追いかけた、商社の違法武器輸出。過去の百舌事件との関わり合いを見せたことから露わになったこの事件は、一時的な収束を見た。しかし、そこへ新たな展開が訪れる。元民政党の議員、茂田井滋が殺されたのだ。しかも両目のまぶたの上下を縫い合わされた状態で。既に現役を退いている彼の殺害理由は何か。彼は何を知っていたのか。探偵となった元警視庁の大杉、彼の娘で現役警官のめぐみ、公共安全局にいる倉木美希はそれぞれ独自に捜査を始める――。殺し屋百舌の正体は!? 捜査が進むにしたがって、次々に百舌の凶弾に倒れる関係者。大杉たちは真の黒幕に辿り着くことができるのか。三十年以上にわたり書き継がれてきた伝説の百舌シリーズ、堂々の完結。(粗筋紹介より引用)
『小説すばる』2017年3月号~2019年8月号連載。2019年8月、集英社より単行本刊行。
『百舌の叫ぶ夜』から33年(『裏切りの日日』からだと38年)。ついに百舌シリーズ完結。
「百舌落とし」とは、百舌の瞼を縫って木にくくりつけ、ギャーギャー泣き喚く声で他の鳥を誘き出す囮作戦のことをいう。すごい残酷な作戦だとは思うが、それをミステリに組み込んだところはお見事。ただ、そこまでなんだよな。個人的には『よみがえる百舌』で終わるべきだったと持っているので、そのあとは惰性で読んでしまった。なんだかんだ気にはなるので。
美希、大杉、残間、めぐみなどのレギュラーキャラクターはそろって登場。過去に絡んだ政治家たちや悪人側も登場。シリーズ完結ということで、今までの因縁に終わりを告げつつ、新たな武器問題もからめる腕はやはり大したものだが、以前にも書いた通り百舌の残滓で読ませているだけ。登場人物たち、警戒心なさすぎだろう。特に残間。
犯人側の心の動きがほとんど書かれていない点も問題。なんで今回の犯行に手を染めたのが、一応の動機こそ書かれているものの、最後まで読んでもピンとこなかった。こういうのって、犯人側の執念をもっと丁寧に描写すべきじゃなかったのだろうか。
まだまだ事件が起きそうな問題は残っているものの、登場人物たちの多くにけりがつき、シリーズは完結。とはいえ、まだ新作が続きそうだけどなあ。百舌じゃない、というだけで。例えばめぐみが主人公でそれを美希が見守るとか。