- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/15
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「俺、ここでいったい何をやっているんだろう」。江戸・深川の鉄瓶長屋を舞台に店子が次々と姿を消すと、差配人の佐吉は蒼白な顔をした。親思いの娘・お露、煮売屋の未亡人・お徳ら個性的な住人たちを脅えさせる怪事件。同心の平四郎と甥の美少年・弓之助が、事件の裏に潜む陰謀に迫る「宮部ワールド」の傑作。(下巻粗筋紹介より引用)
『小説現代』1996年3月号〜2000年1月号まで連載。加筆・訂正後、2000年4月、講談社より単行本刊行。2004年4月、文庫化。
「殺し屋」「博打うち」「通い番頭」「ひさぐ女」「拝む男」「長い影」「幽霊」を収録。江戸・深川の鉄瓶長屋を舞台に事件が起き、長屋の店子が次々と姿を消していく。南町奉行所の同心、町方役人の井筒平四郎が事件の裏に潜む謎に迫っていく。とはいえ、タイトルの「ぼんくら」にあるとおり、この平四郎、楽な仕事の方がいいという「適度にいい加減な男」。事を荒立てず、事件が収まればそれでいいというのだから、何とも頼りない。
鉄瓶長屋は一代で財を築いた築地の湊屋総右衛門が持つ長屋。表通りには八百屋、煮売屋、魚屋、駄菓子屋などが並んでいる。後家で煮売屋のお徳が住人達を束ね、平四郎は中間の小平次とともにそこによっては何か食べて時間を潰すというありさまである。
「殺し屋」から「拝む男」までは短編。平四郎がどのような人物であるか少しずつ紹介され、そして彼を取り巻く人たちも徐々に登場していく。また鉄瓶長屋をめぐる謎が少しずつ深まっていく。そして本編の半分以上を占める「長い影」。妻の姉が嫁いでいる河合屋の五人目の子供、12歳の美少年・弓之助が登場し、平四郎と一緒に事件の後を追う。
連作短編集の形を取っているかと見せかけて、実は長編時代小説。思っているより入り組んだ謎。複雑な人間関係。利発な弓之助とぼんくらな平四郎が辿り着いた真相は意外な、そして哀しいもの。事件の組み立て、人物の造形、配置、さらに小説の構成など、見事な仕上がり。さすが宮部みゆき、としか言いようがない。
時代小説ならではの人情味あふれた、そしてミステリならではの謎に酔わせてくれる傑作。続編も読みたくなってくる。