平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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長岡弘樹『教場』(小学館)

教場

教場

君には、警察学校を辞めてもらう。この教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。前代未聞の警察小説! (「BOOK」データベースより引用)

『STORY BOX』No.1、4、5、8、11、14、17、18に掲載された『初任』を全面改稿し、改題。2013年6月、単行本刊行。



警察学校の植松教官が肺炎で入院し、新たに風間公親教官が就いた。宮坂は風間に、その日に気づいたことを何でも報告するように言われる。「第一話 職質」。

楠本しのぶは、同期の岸川沙織に脅迫状を出していた。しのぶが警察学校に入ったのも、沙織に復讐するためであった。「第二話 牢問」。

鳥羽暢照は白バイ隊員になるのが夢だった。ある日、親友の稲葉が出抜け(無断外出)をしたと疑いを掛けられた時、鳥羽はアリバイがあることの証言を求められるも、嘘をついてしまう。「第三話 蟻穴」。

元プロボクサーで最年長、かつ級長の日下部准は、小火の犯人の濡れ衣を着せられる。「第四話 調達」。

由良求久は蜂が大の苦手だった。パトカーの運転練習中、蜂が車内にいたため、パニックになる。「第五話 異物」。

都築耀太は日下部に頼まれ、卒業文集編さん委員になる。都築は防犯畑に進むことを希望していたが、風間は度胸がないから辞めろ、それが嫌なら私を納得させろと言われる。「第六話 背水」。

第百期短期課程の40人が学校に入ってきた。風間は久しぶりに教壇に立つ。「エピローグ」。



警察学校が舞台の連作短編集というのは、多分初めてだろう。これだけで興味が湧くが、読んでいてアイディア倒れにならず面白かったことにびっくり。風間という人物の無気味さはともかく、楽しむことができた。警官がこんな人物ばかりだと思うと、ちょっと恐ろしい気もするが。

内容的にはちょっと弱い部分があるかな(「第五話 異物」とか)があったと思うが、舞台の目新しさに救われている気もする。とはいえ、次の短編で前作の結末の後日譚をさり気なく語る構成などはよくできている。

続編を書いているようだが、あまりにも似たような話が続くと、飽きが来る。そのあたりをどうするかが、今後の課題だろう。