- 作者: 斎藤栄
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1998/04
- メディア: 文庫
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1967年11月、講談社より書き下ろし刊行。1998年4月、徳間文庫化。
斎藤栄が1966年に『殺人の棋譜』で第12回江戸川乱歩賞を受賞後、1年半かけて書かれた受賞後第一作長編。
作者自身が代表作という通り、力の入った作品となっている。警察の捜査が中心で、もっとも有力な容疑者のアリバイ破りが基本路線。アリバイトリックを一つ破ると、実はと言いだして別のアリバイを持ち出し、の繰り返し。一つ一つのアリバイトリックに工夫が凝らされており、そして徐々に難解なものとなっていく。そして最後に出てくるトリックは、作者の知識をふんだんに詰め込んだ新しいもの(当時)であり、これだけでも十分読み応えがある。しかし本作について語るべきは、幾重にも重なったアリバイトリックだろう。これはよく考え抜かれたトリックで、作者自身が代表作というのもわかる気がする。
斎藤作品はトリッキーなものも多いが、本作はプロットとトリックが融合した傑作。これは読むべし。何をいまさら、と言われるだろうが。