平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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斎藤栄『真夜中の意匠』(徳間文庫)

真夜中の意匠 (徳間文庫)

真夜中の意匠 (徳間文庫)

岡弘が絞殺された。発見者は弘の継母、久子。父、一夫はがんセンターに入院中で余命幾ばくも無い。ちょうど岡家代々の土地が、ニュータウン計画に莫大な金額で買収されることが決まった時であり、遺産相続がらみの殺人との観点で捜査が始まった。もっとも有力な容疑者は弘の叔父の京一郎だが、彼には鉄壁のアリバイがある……。幾重にも連なるアリバイの巧妙さで、推理小説界に反響を巻き起こした、傑作長篇!(粗筋紹介より引用)

1967年11月、講談社より書き下ろし刊行。1998年4月、徳間文庫化。



斎藤栄が1966年に『殺人の棋譜』で第12回江戸川乱歩賞を受賞後、1年半かけて書かれた受賞後第一作長編。

作者自身が代表作という通り、力の入った作品となっている。警察の捜査が中心で、もっとも有力な容疑者のアリバイ破りが基本路線。アリバイトリックを一つ破ると、実はと言いだして別のアリバイを持ち出し、の繰り返し。一つ一つのアリバイトリックに工夫が凝らされており、そして徐々に難解なものとなっていく。そして最後に出てくるトリックは、作者の知識をふんだんに詰め込んだ新しいもの(当時)であり、これだけでも十分読み応えがある。しかし本作について語るべきは、幾重にも重なったアリバイトリックだろう。これはよく考え抜かれたトリックで、作者自身が代表作というのもわかる気がする。

斎藤作品はトリッキーなものも多いが、本作はプロットとトリックが融合した傑作。これは読むべし。何をいまさら、と言われるだろうが。