平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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カシュウタツミ『混成種―HYBRID』(角川ホラー文庫)

混成種―HYBRID (角川ホラー文庫)

混成種―HYBRID (角川ホラー文庫)

それは、天才が生み出した一つの発明から始まった…。学界から異端視されている黒田博士の発明「金属植物」は、画期的であるにもかかわらず、学界やマスコミから全く相手にされなかった。――なんとかして世の人々に認めさせたい。黒田は、金属植物「チップ」を代用神経として使うことを思いつき研究を重ねた。実験が進むにつれ、黒田は妄想と狂気のはざまに入り込み、ひとつの想いに捕らわれていった。そして……。衝撃的なテーマで新たな恐怖を描いた異色のホラー。(粗筋紹介より引用)

1994年、第1回日本ホラー小説賞佳作受賞。同年4月、角川ホラー文庫より刊行。



第1回佳作を受賞した3作品のうちの1作。金属イオンで蔦が成長するアイディアは始めて見たが、もしかしたら過去作品にあったのかもしれない。そこから代用神経につなげる発想も面白い。しかし、蔦が人間を乗っ取るというのは、手段はどうあれよくある展開。ここでもう少し面白いアイディアがあれば、と思ったのだが、最後はなぜか漫画チックなバトルの展開になってしまい、興醒め。前半の展開が悪くないだけに、後半をもう少し考えてほしかった。これでは佳作止まりも仕方がない。

もっと静かに侵食していく展開の方が、不気味さがより伝わっただろう。何とももったいない作品。

ホラー大賞もこれで第21回までコンプリート。もう少しだ。