平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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道尾秀介『カラスの親指』(講談社文庫)

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは? 息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。道尾秀介の真骨頂がここに!(粗筋紹介より引用)

メフィスト』2007年9月号〜2008年5月号連載。2008年7月、単行本刊行。2009年、第62回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞。2011年7月、文庫化。2012年には映画化されている。



道尾秀介日本推理作家協会賞受賞作。いつかは双葉から出るだろうと思っていたのだが、近年の刊行ペースの遅さにさすがにしびれを切らして購入してしまった。

人にはあまり言えないくらい過去を持ち、人生に敗れた詐欺常習犯の中年男二人が遭遇した姉妹と姉の恋人、そして猫。一発逆転の大仕掛けを企てる、というコン・ゲームもの。

バックグラウンドが暗いとはいえ、幸せ指数が高そうな作品を書くなんて、道尾秀介にしては珍しいと思ったら、やっぱりいろいろ仕掛けがあった。とはいえ、これは余計な事を考えずに、素直に騙された方がいいかな。ただ、登場人物、素直すぎ(苦笑)。所々のたとえもよかったかな。特にお父さん指の話はなかなか。

これは作者のテクニックを素直に受け入れる作品、と言っていいだろうか。その気になればいくらでもどんでん返しが効きそうだが、ここで止めておくのが無難なところか。何事もやりすぎない方がいい。