平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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京極夏彦『死ねばいいのに』(講談社文庫)

文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)

文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)

死んだ女のことを教えてくれないか。三箇月前、自宅マンションで何者かによって殺された鹿島亜佐美。突如現れた無礼な男が、彼女のことを私に尋ねる。私は彼女の何を知っていたというのだろう。交わらない会話の先に浮かび上がるのは、人とは思えぬほどの心の昏がり。極上のベストセラー。(粗筋紹介より引用)

2009年、『小説現代』に「一人目」から「五人目」まで連載。書下ろし「六人目」を加え、2010年5月、単行本刊行。2012年11月、文庫化。文庫版として出版するにあたり、本文レイアウトに合わせて、加筆訂正がされている。



タイトルに非常なインパクトがある作品。若い男が、亜佐美と関係のあった人物と接触し、亜佐美のことを尋ねる。不倫相手、隣人、情夫、母親、そして刑事。無礼な物言いに怒りながらも、亜佐美のことを何も知らなかったことに気づき、暴かれたくない自分の暗い部分に気づかされる。京極にしては珍しいぐらいお手軽に読めるスタイルであるが、突きつけてくる事実は結構重い。現実社会の問題点も薄らと洗い出されている点も興味深い。何となく自分が責められている感じがするのは気のせいか。

ページをめくる手が止められないのは、やはり作者の巧さだろう。(執筆時点での)今時の若者言葉が何ともウザったいが、それでも目を離せない。そのくせ、気分がよくなるわけでもない。文庫版では「菩薩」の絵が載せられているが、亜佐美によって登場人物も我々も救われたのであろうか。