平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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小峰元『ソクラテス最後の弁明』(講談社文庫)

ソクラテス最期の弁明 (講談社文庫 こ 1-3)

ソクラテス最期の弁明 (講談社文庫 こ 1-3)

男女一組を乗せたボートが遭難、女性は水死。救助された男は、高校生。単なる事故死と思われたが、男の態度に疑惑が残る。県警の黒木刑事は聞きこみにかかるが、その矢先、事故の唯一の目撃者が怪死。事件はいよいよ謎をおびてくる。恋愛、セックス、受験などの問題を通し、高校生群像を活写する青春推理。(粗筋紹介より引用)

1974年、講談社より単行本刊行。1976年9月、講談社より文庫化。



アルキメデスは手を汚さない』で第19回江戸川乱歩賞を受賞した作者の第三長編。作者は受賞後、「主人公は向こう見ずで、滑稽で、反体制的で、それでいて自分のやりたいことに関しては辛抱強くて、小器用で、小粋ですらある拗ね者のヤング悪漢。そんな“現代推理悪漢小説”を、私は書いてみたい」と述べていた。不良とは違うが、学校のルールからはちょっと外れている学生たちを描いた受賞作は非常に面白かったが、それ以外の作者の作品を読んだことが無かったので、手に取ってみることにした。

ところが、1970年代の風俗ばりばりの作品を40年後に読むと、どうも付いていくことができない。登場人物の考え方も、どことなく幼稚で、どことなく小賢しい。父親の金で喫茶店を開き、先輩を顎で使う高校生というのは、当時であろうとリアリティに欠けているだろうと思わせる以上に、ナンセンスに見えてくる。

一応事件が起きるし、犯人探しやトリックの解明などもあるのだが、読んでいて青春群像物語にしか見えてこず、推理小説の推理の部分があまりにも希薄。この作者、こんなにつまらなかったっけ、と首をひねってしまった。当時、結構売れていた記憶があるのだが。

やはり若いころに読むべきだったか。それとも、当時読むべきだったか(いや、流石にリアルタイムでは読めなかったが)。