- 作者: 齋藤充功
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2018/01/11
- メディア: 新書
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二〇一七年(平成二十九)十月現在、確定死刑囚は一二四人が拘置所に収監されている。
そして恩赦によって、死刑から無期懲役へと減刑され、娑婆に出た死刑囚が、いわば、処刑台から生還したものが立ちが過去に存在していたのである――
(折り返しより引用)
今上天皇の生前退位(譲位)が二百年ぶりに行われるに伴い、「恩赦」が実施されるだろう。では、死刑囚はどうか。明治天皇、大正天皇の崩御の際、一部死刑囚への恩赦が実施された。そして1988年9月に昭和天皇の様態が急変した際、死刑囚の間では恩赦が実施されるとの噂が流れ、日高安政・日高信子夫妻、平田光成、今井義人の各被告が恩赦を期待して控訴もしくは上告を取り下げ、1988年10月に死刑が確定した。しかし「昭和天皇大喪恩赦」に死刑囚は含まれなかった。すでに4人とも死刑が執行されている。個別恩赦ですら、1975年6月の福岡事件の元死刑囚が最後である。今回恩赦が実施されたとしても、死刑囚が対象になることはないだろう。
本書はタイトル通り、死刑囚と恩赦についてまとめられたものである。時期としてはタイムリーであるし、いいところに目を付けたと思った。しかし内容の方だが、残念ながら今までの斎藤充功の持ちネタを改めて披露したに過ぎず、目新しいものはない。「恩赦」についてまとめられた、というだけの本ではあり、初めて読む人にはそれなりにまとまっていると言えるだろうか。どうせ本を書くのなら一人か二人ぐらい、新たに取材してほしかったと思うのだが。せめて新聞記事などを調べ、恩赦になった人物をもう少し特定するとか。村野薫だってもう少し調べている。明らかな誤りも多い。増版されるのであれば治してほしいところだ。
考えてみれば作者は1941年生まれなので、すでに75歳を超えている。もう新たに取材を行うのはしんどいか。もしかしたら、犯罪史に詳しくない誰か別の人物がまとめたのかもしれない。