- 作者: 守大助,阿部泰雄
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2001/06/29
- メディア: 単行本
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守大助は確かにマスコミから殺人鬼と徹底的に叩かれた。疑惑が膨らむたびに、批難の声は大きくなっていった。しかし、最初こそ守大助は罪を認めたが、その後は徹底して無実を主張している。そして弁護団もそんな守を信じ、弁護活動を続けている。
ただ、その後の報道を読んでみると、本当に守が犯人か、微妙なところがあるのも事実。そもそも再鑑定に必要なサンプルがすべて消費されていることも問題だし、物証はない、目撃証言もない。最初に自白したのが大きな証拠となっているが、冤罪事件ではよくあることである。裁判ですら、女児以外の4件については「確定しがたい」と述べている。ただし、最初に自白したものの、怖くなって無罪を主張し続けるというケースがあるのも事実なので、こればっかりは何とも言い難い。
第一章と第二章は、逮捕されてからの守の日記であるが、この取り調べ状況を読むと、無罪の人でも「やりました」と言いたくなってしまうと感じた。一日中、刑事たちから色々と責められては、気が狂いそうになってしまうだろう。警察って怖いなと思うと同時に、取り調べ状況は可視化すべきだと改めて思ってしまった。
これは弁護側からの一方的な内容になっているため、本当に守が犯人だったかどうかを知りたいのであれば裁判記録を取り寄せ、自ら調べるべきだろう。ただ、本書を読む限りでは、守は無実だと思い込ませるには十分の内容であった。
北陵クリニックは2001年3月10日に閉鎖されているが、先に記した通り、管理の杜撰さ、医療ミス隠しなどが発覚している。また守が犯行を行ったとされる1999年7月〜2000年11月までの間に不審死が続いていたのに、内部調査を行った形跡すらない。それに1998年時点で13億円の借金があり、閉鎖寸前であったことも明かされている。例え守が犯人であったとしても、クリニックに問題がなかったとは言えないだろう。事実、女児と両親は2001年2月、クリニックを運営していた医療法人などに約1億8200万円の損害賠償を求めて提訴。守の一審判決翌日の2004年3月末、クリニック側が1億円を支払うことなどで和解している。
後にクリニックの運営者は、本書で守を犯人に仕立てたとする内容について1000万円の損害賠償を求めた。2011年7月5日、仙台地裁は共著者の阿部泰雄弁護団長に100万円の支払いを命じた。謝罪広告掲載の請求は退けた。
守大助は今も再審請求を続けている。そして母親は息子の無罪を信じ、活動している。阿部も引き続き、支援を行っている。