平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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日向まさみち『本格推理委員会』(角川文庫)

本格推理委員会 (角川文庫)

本格推理委員会 (角川文庫)

小・中・高校の一貫教育学校・木ノ花学園の音楽室に、死んだはずの女性が現れたとの噂が流れる。探偵の素質を持った少年少女を選抜して結成された"本格的に推理をしてしまう委員会"『本格推理委員会』に、理事長の命令で入ることになった高校生の城崎修は、その怪談話の発生源を探り始めるが、そこには思わぬ真実が待ち受けていた! 第1回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した、痛いほどに純粋な次世代青春&ミステリ。(粗筋紹介より引用)

2004年、第1回ボイルドエッグズ新人賞受賞。同年7月、産業編集センターより単行本刊行。2006年12月、角川文庫化。



ボイルドエッグズ早川書房の編集者であった村上達朗が、欧米の出版界では一般的である著作権エージェント会社として1998年12月に創業した」(Wikipediaより引用)とのことだ。その会社が主催しているのが、ボイルドエッグズ新人賞。本作品は、その第1回受賞作である。

単行本で出ていた頃から、本格ミステリファンをくすぐるタイトルと、今で言うラノベ風の表紙のイラストが気になっていたのだが、今頃になって読んでみた。とはいえ、読み終わってみると微妙。

一貫校で起きた噂を解決するべく結成された「本格推理委員会」が謎解きに挑むのだが、どちらかと言えば自分探しに近い話。途中から想像着いたけれど、"あれ"が出てきたところで投げ飛ばそうかと思った。うーん、ここでこれをやるか。

登場人物や舞台の紹介がとても長いので、読んでいてまどろっこしいし、物語のテンポを削いでいる。登場人物も多い割に、動きは少ない。ヒロインであるはずの幼馴染み・木下梢の影の薄さは一体何なんだ。特に委員会を結成した学園長が、自分の考えを押しつけるばかりで、読んでいて腹が立ってくる。それで心を変える方も変える方だと思ってしまった。

青春ミステリを目指すなら、もっと軽いテンポのノリが必要。シリアスが不要だとは言わないけれど、使うべきところは限定すべき。主人公の周りを女性で固めるなら、もっとそれっぽい展開も用意すべきだろう。

それにしても、シリーズ化されるの前提、で受賞したのだと思っていたのだが、これ1冊で終わっているとのこと。それだけはちょっと勿体ない。