- 作者: 三沢明彦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/02/07
- メディア: 単行本
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2004年2月、刊行。
読売新聞記者の警視庁捜査一課担当だった三沢明彦による、警察側からの視点によるオウム真理教事件他の捜査について語った一冊。
犯人側からの告白本や、事件全体を扱ったノンフィクションは珍しくないが、捜査側の視点にこだわったとした一冊はどちらかといえば珍しい。外野から見たら、悪い奴はさっさと捕まえればいいと簡単に言ってしまうが、警察や検察側はそうはいかない。裁判で有罪に持ち込めるだけの立証が当然必要だし、強引なことをしてしまえば裁判の弁護士だけでなく、人権団体やマスコミから攻撃の対象となってしまう。目の前に犯人がいることをわかっていながら、じりじりする姿は納得いくものだ。人権団体やマスコミも、少しはこういう姿を見て、ただ無分別に叩くのではなく、もう少しまともな批判をしたらどうなんだとは思ってしまう。
ただ、捜査側を視点としたから仕方がないことかもしれないが、あまりにも刑事たちをヒーローに書きすぎている点が気になる。例えば三億円事件で簡単に「誤認逮捕もあった」などと書いているが、その誤認逮捕された人が最後は自殺してしまったという事実ぐらいは書いたらどうなんだと思ってしまった。プロフェッショナルとしてたたえるのならまだわかるが、テレビの刑事ドラマではないのだから、もう少し負の部分も書くべきだった。
捜査に携わる刑事や鑑識たちも(多分)実名で書かれており、その内容は臨場感あふれるものである……はずなのだが、ところどころで人物紹介やそのエピソードに力を入れすぎて、話があちらこちらに飛んでしまうのは困ったもの。せっかくの迫力が一気に萎えてしまうのにはまいった。新聞記者とはとても思えない。しかも、過去の事件のエピソードが唐突に入ってきて、それが説明不足なものだから、何が何だか分からなくなってしまっている(特に第二部)。自分たちが接した刑事たちに思い入れがあった故の結果だろうが、もう少し読者のことを考えてほしかった。
第一部でのオウム真理教関連に力が入りすぎ、第二部はさらっと流されてしまっている。これだったら、オウム関連でそろえてくれた方が良かった。いっそのこと、坂本弁護事件や松本サリン事件にももっと触れればよかったのにと思ったものだが、その辺に触れると警察批判に結びついてしまうから、あえて避けたのだろう。第二部が筆足らずになっているのがとても残念である。オウムみたいな未曾有の事件の捜査の舞台裏もいいが、その他の凶悪事件についてはどうなのかについてももっと筆を費やしてほしかった。その方が、より、捜査一課という舞台の裏側が浮き彫りになったに違いない。
捜査一課への思い入れが強すぎて、まとまりに欠けた読みにくい一冊。もう少し整理した改訂版を読んでみたい。