- 作者: 深水黎一郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/10/07
- メディア: 文庫
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2007年4月、『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』で第36回メフィスト賞を受賞し、講談社ノベルスより刊行。2014年10月、改題、全面加筆修正の上、河出文庫より発売。
本格ミステリで残された「最後のトリック」とも言える「読者が犯人だ」に挑んだ作品。ある意味、こういうやり方があったのか、とは思ったけれど、厳密に言えば読者が殺人の実行者、というわけでは無いので、肩すかしを食らった感が強い。さらに言えばこのトリック、とある能力が必要とされるので、ずるいと言われても文句は言えないだろう。そもそも、こんな経緯のある新聞連載、本にする出版社があるか? その時点で破綻していると思うのだが。
これで小説が面白ければ、まだ救いがあったのだが、はっきり言ってつまらない。本筋ではない「超能力」の実験や説明のところが半分近くを占め、これがまた読んでいて退屈なのだ。よっぽど飛ばそうかと思ったぐらい。"謎の手紙"の内容もつまらないし、どこも面白いところがない。わずか一つのトリックを成立させるために、つまらないページを積み重ねたと言っていいだろう。
「読者が犯人だ」トリックに挑んだ、以外に何も言うことがない作品。このトリックにわくわくしてどんな内容でも許せる、という読者以外には何の面白みもない。まあ、話のネタにしたい人はどうぞ、程度のものである。メフィスト賞以外だったら、誰も見向きもしなかったはず。