平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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フィリップ・マクドナルド『Xに対する逮捕状』(国書刊行会 世界探偵小説全集3)

Xに対する逮捕状 世界探偵小説全集 3

Xに対する逮捕状 世界探偵小説全集 3

シェルドン・ギャレットはふと立ち寄った喫茶店で、二人連れの女の奇妙な会話を耳にした。どこかで、何か恐るべき犯罪が計画されているらしい。この雲をつかむような事件を持ち込まれたゲスリン大佐は、残されたわずかな手がかりをもとに推理と探索を積み重ね、知られざる犯罪者を一歩一歩追いつめていく。しかしゲスリンの懸命の努力を嘲笑うかのように、関係者は次々と姿を消し、あるいは殺され、やがてギャレットにも魔の手が迫った。はたしてゲスリンは事件を未然に防ぐことが出来るのか?

サスペンスにとんだ発端、中盤の論理的な展開と緊迫のクライマックス。エラリー・クイーンら多くの評者が推賞した、幻の本格派マクドナルドの代表作。(粗筋紹介より引用)

1938年、発表。1963年、浪花書房より翻訳発売。1994年12月、新訳発売。



幻の本格派、フィリップ・マクドナルドの代表作の一つ。マクドナルドと言えば、やはり『鑢』が本格ミステリとして面白かった。だから期待していたんだけどなあ。

二人連れの女の会話と、バスの切符と買い物メモの切れ端から犯罪集団を暴き立てるまでの展開は、本格ミステリとして読んでいても実に面白く、これはと期待させたのだが、だんだんと展開がスピーディーになり、主人公であるギャレットの言動がどことなくコメディチックで、それでいてサスペンス風味が強くなり、めまぐるしい展開が待ち構えている。気が付いたら、前章まで語られていた謎はどこへ行ったんだ、と言いたくなるぐらいどんどんスピードが速くなっていき、最後に事件は解決するのだが、どことなく曖昧な部分を残し……。どう考えても、続編期待のサスペンスドラマと一緒じゃないか、と言いたくなった。マクドナルドは1931年からアメリカにわたり、ハリウッドでスクリプトライターとして活動していたとのことだから、この映画のような展開は作者のお得意といったところだったのだろうか。

クイーンにどこが良かったのか、尋ねたくなってくる。まあ、本格ミステリとして読んだら、大きな期待外れであると言っておこう。