平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

クレイトン・ロースン『天井の足跡』(国書刊行会 世界探偵小説全集9)

天井の足跡 世界探偵小説全集 (9)

天井の足跡 世界探偵小説全集 (9)

求む貸家、幽霊屋敷――奇怪な広告にハートは目をみはった。どうやら背後には友人グレイト・マーリニがいるらしい。マーリニの誘いで、交霊会調査のためニューヨーク沖に浮かぶスケルトン島へと向かった二人は、無人のはずの屋敷で女の死体を発見する。現場の天井には謎の足跡が残されていた……。孤立した状況下で次々に起こる怪事件、おりしも島には、冷媒、心霊学者、元ブローカー、発明家など、いずれも一癖ありそうな人物が揃っていた。幽霊屋敷、交霊会、毒殺、謎の放火、密室の死体、沈没船の宝探しと、めまぐるしい展開の難事件に挑む奇術師探偵グレイト・マーリニの名推理。(粗筋紹介より引用)

1939年、発表。奇術師探偵グレイト・マーリニの長編2作目。1995年8月、邦訳発売。



これだけお膳立てしておきながら、どうしてこれだけドタバタして、まとまりの悪い作品になってしまうのだろう。まとめるだけの力がない、ということは、作家としての力が不足していたのだろう。宝探しは地図だけにとどめておくとか、できなかったのかね。おかげで、推理する楽しみがないまま、結末に辿り着いてしまう。謎の不可解さに比べてトリックがあまりにも呆気なさ過ぎて、がっかり感が一塩である。タイトルにまでなっている「天井の足跡」なんて、この程度の理由だったらいらないよ、と言いたい。あまりにも舞台が加飾で、裏から見るとみすぼらしいのがとても残念。マジックと違って拍手喝采とはいかないのは、やはり解決がしょぼい点である。

心霊学の権威であるワトラス大佐と、霊媒のマダム・ラプールは、前作『帽子から飛び出した死』に引き続いての登場。といっても、全然覚えていないのだが。

どうもこの作者とは肌が合わない。代表作である『首のない女』がまだ未読なので、気が向いたらチャレンジしたい。