平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ロナルド・A・ノックス『サイロの死体』(国書刊行会 世界探偵小説全集27)

サイロの死体 世界探偵小説全集 (27)

サイロの死体 世界探偵小説全集 (27)

イングランドウェールズの境界地方、ラーストベリ邸で開かれたハウスパーティで、車を使った追いかけっこ〈駈け落ち〉ゲームが行われた翌朝、邸内に建つサイロで、窒息死した死体が発見された。死んでいたのはゲストの一人で政財界の重要人物。事故死、自殺、政治的暗殺と、様々な可能性が取り沙汰される中で、現場に居合わせた保険会社の探偵ブリードンは、当局の要請で捜査に協力するが、一見単純に見えた事件の裏には、ある人物の驚くべき精緻な計算が働いていた。考え抜かれたプロットと大胆なトリック。手がかり索引を配し、探偵小説的趣向を満載した傑作本格ミステリ。(粗筋紹介より引用)

1933年発表。ノックスの第四作目。2000年7月、翻訳刊行。



買うだけ買って読むことができず、今頃手に取った。ノックスといえば『陸橋殺人事件』だが、皮肉の強いところがちょっと苦手。

さて、本作で最初にピンとこなったのは「駆け落ちゲーム」。ルールを把握するのに一苦労した。逆にサイロの構造はセメントサイロを思い出し、それほど迷わなかったのは職業病か(苦笑)。

事件そのものは、ゲームに参加していないセシル・ワースリーがサイロで死んでおり、他殺か自殺か事故死か不明な状態で、保険会社の探偵であるマイルズ・ブリードンが事件の謎を解きあかすもの。こう書くと単純なのだが、本作はプロットが錯綜して、ストーリーを追いかけるのに一苦労。さらに邦訳が読みづらいことが拍車をかけている。もトンも文章もこんな面倒だったのかな。もっとも内容自体は面白い。推理というよりたまたま思いついた、という部分があるのは残念だが、事件自体の真相は意外なもの。いや、正確に言うと意外でもなんでもないのだが、事象から見ると意外っぽく見えてしまうのだから大したもの。その点では巧みに練られたプロットがお見事というしかない。

これでもう少しマイルズ・ブリードンに個性的な部分があると、もっと面白くなったんだけどねえ。犯人、というかプロットの意外性に、探偵役のエキセントリックさが見劣りするのはかなり残念。