- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/08
- メディア: 単行本
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2011年12月、書き下ろし刊行。
『生首に聞いてみろ』以来7年ぶりとなる法月シリーズの長編もの。本格ベスト1位、文春ベスト5位、このミス8位とランクインしている。
冒頭から4人の「犯人」が登場し、交換殺人の順番と担当をトランプで決める。そして予定どおり犯行は続いていくのだが、途中でひとりの男がミスを犯すところから歯車は狂い出す。
法月警視と綸太郎は2番目の事件から登場。思わぬ事故と犯人側のミスから交換殺人が行われていたことにはすぐに辿り着くのだが、そこからの犯人側との攻防が見物。よく考えて作られている。ただ、サプライズ感は全くない。交換殺人であることが露呈したとき、犯人側がどう誤魔化すか、それを探偵はどう見破るか。倒叙ものに近い仕上がりで、最後にいかにして犯人は逃れようとしたかという謎解きに変わるのだが、それが逆に長編の倒叙ものがもつサスペンス、すなわち逃れられるか逃れられないかという興味を失ってしまう結果となっている。犯人が誰かという面白さは元々無いし、楽しむのは端正な仕掛けと伏線の張り方の妙といったところ。そこを楽しめるかどうかは、読者によって変わってくるだろう。私は上手くできているなと感心はしたし、読んでいてまあまあ面白いのだが、本格ミステリを読み終わった後の満足感はなかった。
最近の長編にしては短い枚数だが、これぐらいシンプルな作りの方が作者の狙いを前面に出しやすく、それ自体は成功している。精巧なミステリではあるのだが、何なんだろうね、この呆気なさは。もう少しぐらいタメを作っておけば、もうちょっと違ったんじゃないだろうか。小説としての面白さが欠けている感は否めない。