平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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三上延『ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』(メディアワークス文庫)

鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは"古書と秘密"の物語。(粗筋紹介より引用)

2011年3月、書き下ろし刊行。



「第一話 夏目漱石漱石全集・新書版』(岩波書店)」、「第二話 小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」、「第三話 ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」、「第四話 太宰治『晩年』(砂子屋書房)」、全四話の日常系ミステリ。主人公でプータローの五浦大輔は、子供の頃に祖母の本棚を弄っている途中に酷く殴られてから、本を長時間読むことができない体質になっている。祖母の遺品に夏目漱石のサインがあったことから、本物かどうか「ビブリア古書堂」を尋ねるが、店主である篠川栞子は脚の骨折で入院中。大輔は栞子と会話を重ねるうちに、この本に纏わる自分の出生の謎を知る。第一話終了後、大輔はビブリア古書堂で働くこととなる。

第一話が主役二人の出会いなら、第二話、第三話は後のサブキャラクター初登場である。そして第四話は栞子が骨折で入院していた秘密が明かされ、太宰治『晩年』の署名入りのアンカット本をめぐる話が繰り広げられる。

今頃読むかといわれそうだが、家に転がっていたので手に取ってみる。古書の蘊蓄は読んでいて嫌いではないが、ライトノベルの割には動きが地味。いわゆる人情物と日常の謎が絡み合った作品かと思ったら、第四話は結構ハード。黒い人物、多いなあ。栞子という人物も結構腹黒だし。大輔ぐらいかね、素直すぎるのは。それにしても、栞子が大輔を気に入る理由がよくわからない。ミステリ要素は期待していなかったが、今一つ。

正直言って、可も無く不可も無く、といったところだろうか。退屈はしなかったが、それほど面白かったというわけでもない。うーん、なぜこれが売れたのか、よくわからない。