- 作者: 乾 くるみ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/04/10
- メディア: 文庫
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2004年4月、原書房ミステリー・リーグより書き下ろしで刊行。2007年4月、文春文庫化。
作者のタロットシリーズの1冊だそうだが、1冊も読んでいない私にとっては意味があまりない情報かも。一部で評判となった後、じわじわと人気が広がり、いつの間にか100万部を突破していた。2015年には映画化されている(どうやって映画化したかだけは興味がある)。
評判になっていたのは知っていたが、作者のデビュー作『Jの神話』や『匣の中』がつまらなかったので、読む気が全く起きなかった。時間がたまたまできたので、手元にあった本を読んでみたのだが、ここまで評判になる理由が今一つわからなかった。
Side-Aでは、大学四年生であるたっくんこと鈴木と、歯科衛生士のマユこと繭子の出会いから恋人になり、クリスマスイブを迎えるまでが書かれる。Side-Bでは、たっくんこと鈴木が就職して東京に出向し、恋人であるマユこと繭子とすれ違いが生じ、さらに東京で恋人ができたことと、マユが妊娠して中絶したことをきっかけに別れてしまうまでが書かれる。
まあ、元々ドンデン返しがあることは聞いていたし、わざわざ背表紙の粗筋で「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する」と書かれると、身構えてしまうのは確かなのだが、それを抜きにしても違和感ばりばりだったんじゃないか、と言いたい。普通に読んでいても、辻褄の合わないことだらけである。これみよがしに散りばめられたデータもすぐに見えてくる。結局最後まで読んでも全然びっくりしなかったし、あまり楽しめなかった。
恋愛小説としては、ありきたりで退屈。まあ、わざとなんだろうけれど。それにしても、セックス描写をもっと上手く書いてほしいところだ(苦笑)。仕掛けに凝る暇があったら、物語にも凝れよとは言いたい。
「読み終わった後は必ずもう一度読み返したくなる」という評は納得。といっても、どこにどんなデータがあったか、答え合わせみたいな感覚でしかない。
何がよかったかと聞かれると、大矢博子の解説かな。それ以外は特にない。まあ、この手のネタとしてはすでに某作品に触れていたから、すぐに気付いたのかも知れない。