平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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加藤元浩『Q.E.D.―証明終了―』第50巻(講談社 マガジンコミックス)

燈馬のMIT時代の友人であるサリー・ブライスは、実験観測装置を作る会社を経営している。ここ最近、主力であるヘリウムの冷却機の不審な故障が続いていた。大型ハドロン衝突型加速器LHC)では、侵入者が円形のトンネルで両側から挟み込まれたのに消えていた。ハワイ・マナウケアの天文台では、10日間鍵のかかった部屋で冷却器が止まっていた。サリーに呼ばれた燈馬と可奈が事件に挑む。「観測」。
差出人不明の手紙により、エスケープゲームの会場をセッティングした可菜と燈馬。会場当日、100万円の賞金につられ、現れた5人を相手に進行を始める可菜と燈馬。1問目の答えで得られた指輪を見た元刑事は、16年前に製材所の倉庫で首を吊って死亡した大物政治家の帳簿係が失くした指輪と同じだと気付く。倉庫は密室だったため状況は自殺だったが、元刑事は他殺ではないかと疑っていた。クイズの規格者の意図は何なのか。「脱出」。
ついに50巻到達。クオリティを下げることなく続けられることに感心する。1本目は不可能犯罪とその背景の推理、2本目は密室と企画者捜しにクイズという趣向が加わる。トリックそのものは小粒でも、演出一つで面白い作品に仕立てられる腕は見事というしかない。特に「観測」は人類不変の問題ともいえる問題が背景にさりげなく隠されているところに感心する。ところでサリーって燈馬と同い年なのに、もう世間でも有数の会社を経営しているのか。実力社会ってやっぱり凄い。
今回の2編はいずれも書下ろし。今後は『Q.E.D.―証明終了― iff』とタイトルを変え、新装刊『少年マガジンR』に連載されるとのこと。内容がそれほど変わらないのなら、このまま続けてほしかったところだが、マンネリズムを避けたテコ入れかな。