平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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安萬純一『ボディ・メッセージ』(東京創元社)

ボディ・メッセージ

ボディ・メッセージ

アメリカはメイン州・ベックフォード、ディー・デクスター探偵社に一本の電話が入る。探偵二名をある家によこしてほしい、そこで一晩泊まってくれればいいという、簡単だが奇妙な依頼。訝しみながらもその家に向かったスタンリーとケンウッドに、家人は何も説明せず、二人は酒を飲んで寝てしまう。しかし、未明に大きな物音で目覚めた二人は、一面の血の海に切断死体が転がっているのを発見。罠なのか? 急ぎディーの家に行って指示を仰ぎ、警察とともに現場に戻ると、何と血の海も死体も跡形もなく消え去っていた――。事件を追う探偵社の面々の前に、日本人探偵・被砥功児が颯爽と登場する。(粗筋紹介より引用)

2010年、第20回鮎川哲也賞受賞。応募時タイトル『ボディ・メタ』。同年10月、刊行。



アメリカが舞台、しかも私立探偵が出てくる、となると鮎川賞にしては珍しいハードボイルドか、とちょっとだけ期待したのだが、単にトリックを実行できる舞台としてアメリカが選ばれたに過ぎなかった。アメリカの風景はほとんど描かれないし、アメリカ人らしさも全く見られない。そもそも時代設定すらよくわからない。本格ミステリにトリック成立のための最低限以上の舞台説明は不要だという人からしたらいいかもしれないが、これでは小説を読んだ気が全くしない。だいたい、デクスター探偵社が総力上げて金にもならない事件に取り組むのかという点について全く説明がない。トリックのために舞台、人物を配置しているだけに過ぎない。事件解決役である正体不明の日本人、被砥功児(ピートコージ)というのもただ事件解決のために配置されているに過ぎないし。

死体を切断する理由については説明が付いているけれど、そこから犯人に辿り着くまでの過程がさっぱりわからない。犯人の正体を知っても、全然驚かない。ただ唖然とするだけだ。切断する理由を推理するロジックを思いついて、そこから無理矢理人物を配置して設定を考えただけの本格ミステリにしか見えない。とはいえ、小説が面白くないと、ロジックだけ頑張っても何も感動しないのだけれども。

よくこれで鮎川賞を取ることができたな、というのが読了後の感想である。はっきり言ってつまらない。もっと読者を喜ばせることを考えないと、小説家としては非常に厳しい。次作にも被砥功児が出て来るらしいが。