- 作者: 大沢在昌
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/01/18
- メディア: 新書
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1作品当たりのページ数は少ないものの、なかなか味のある作品がそろっている。
鮫島の新宿署着任当初における防犯課課長の桃井とのエピソードを書いた「区立花園公園」、『狼花』の後日談である「霊園の男」、鮫島が高校の同窓会に出る「再会」、ママフォースが舞台となる「水洗」あたりはシリーズファンへのサービス作品に近い。
「似たものどうし」は『シティーハンター』の冴羽?と共演(槇村香が出ているから『エンジェル・ハート』ではない!)。「幼な馴染み」は『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉と競演。後者では鑑識課の薮と両津が幼な馴染みということになっているのだが、これを公式設定にしていいのか(苦笑)。しかも藪が医者にならなかった真の理由も明かされるし。
個人的ベストは、嵐の夜の小さな酒場を舞台にした「雷鳴」。次は行方不明だったヤクザが現れる「亡霊」。前者は鮫島らしさとハードボイルドテイストが上手く噛み合った佳作、後者は意外な結末が哀愁を誘う。それと「五十階で待つ」のブラックユーモアはなかなか面白い。
長編シリーズと比べると気軽に読むことができるが、逆に肩の力を抜いて鮫島の活躍を楽しむ向きには手ごろな作品集。個人的には面白かった。