- 作者: 笹本稜平
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2012/10/11
- メディア: 単行本
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死んだ社長の代わりに副社長である森尾が会社を清算し終えたが、事件から1年後、森尾は殺人罪で訴えられた。
『小説NON』2011年5月号〜2012年4月号連載作品に加筆修正。2012年10月刊行。
アスパイアリング登攀から遭難、生還までの流れと、逮捕から裁判までの流れが交互に書かれる構成。どちらにも共通しているのは、人を信じることの強さである。
数々の山岳小説を書いてきた笹本なので、山のシーンはお手の物。実際に登山をしたことがない私でも、山の素晴らしさと恐さが迫ってくる。そして検察側の思い込みによる逮捕、裁判にいたる流れは、冤罪がどのように作られていくかをストレートに教えてくれる。
結末にいたる流れはありきたりだが感動した。そして、森尾が濡れ衣を着せられる動機とその手段も考えられていると感じた。ただ、手堅くまとまりすぎた感はある。もう一山あってもよかったんじゃないだろうか。特に裁判の判決あたりはもう少し書き込みがあってもよかったと思う。
良作ではあるが、もう一つほしいと思わせる作品。作者にはもっと骨太の作品を期待したい。