Q.E.D.証明終了(46) (講談社コミックス月刊マガジン)
- 作者: 加藤元浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/10/17
- メディア: コミック
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1941年、ハノイの法廷で被害者の夫は死刑判決確実の被告の助命嘆願を願い出た。しかも彼は愛妻を亡くした衝撃で日本から上海に渡り、上海からハノイまで1000kmを歩き通して法廷に出ていたのだ。しかし亡くなったノンフィクション作家は、そのルポルタージュを本にしなかった。燈馬がその真相に迫る。「巡礼」。
「失恋」は軽めの話で、盗難事件の方は完全な脇役。芸に対しての取り組み方と覚悟の方が主眼となっている。前巻の「初恋」と同時進行になっているのだが、かたや恋の成就、かたや失恋というストーリーになっているのは興味深い。同じ巻に収録すればよかったのにと思うのだが。師匠が語る二つのスイッチの話は、今の若手芸人にも読ませてみたいし、どう思うのか気になる。ただ、落語家の弟子になった前座が、寄席で漫談なんかできるのだろうか。色物として入ったわけではないだろうに。
「巡礼」の方は戦慄する話。推理自体はたいしたことがないものの、推理によって得られる真実そのものが恐ろしい。「罪」と「罰」について考えさせられる逸品。結末まで進むと、燈馬も可奈の明るさにいつも救われているのだろうと思うので、この終わり方もなかなかよい(いつも便利屋扱いされているが)。ただなあ、当のノンフィクション作家だってあの人物と接触ぐらいできそうな気もするし、真実に届くんじゃないかと思うのだが。
このシリーズ、トリックや推理を楽しむことができた初期に比べ、人間ドラマの方に重点を置かれることが多くなってきたのは楽しくもあり、昔もよかったと残念に思うところもあり。