平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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福田洋『贋札 妄執のニセ五千円札事件』(講談社)

贋札―妄執のニセ五千円札事件

贋札―妄執のニセ五千円札事件

1981年に発生したリ−一八号事件を小説化し、1985年7月に発表した作品である。本事件を扱ったノンフィクションとしては、読売新聞社から『ドキュメント5000円札偽造事件』として、1983年5月に刊行されている。

事件は主犯である富永を中心に描かれている。そのせいか、富永が悲劇の主人公っぽくなっているのだが、よくよく見れば単に背伸びをしすぎて事業に失敗しただけに過ぎない。ニセ札としてはなかなかの出来だったらしいが、店頭で呆気なくニセ札と見破られるなど、過去の事件と比べればそれほど話題にはならなかったと思われる。

殺人事件のような派手な事件ではないためか、展開そのものも地味であり、ノンフィクション・ノベルとしてはそれほど面白味がない。あとがき等が全くないため、作者の言葉は何一つ聞こえてこない。いったい何故作者がこの題材を選んだのか、聞いてみたいところである。