- 作者: 山田宗樹,角川書店装丁室
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2003/05/23
- メディア: 文庫
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1998年、第18回横溝正史賞受賞。
ちょっと癖のある悪徳弁護士ものなのかと思ったら、主人公の小早川は意外と正義感があるし、引き受けた二件の交通事故の弁護については小早川の想定と異なった方向へ流れていく。どちらも事件の糸口を見出すのは、採用されたばかりの紀藤ひろこ。ややストレートに書きすぎた分、慣れたミステリファンなら事件の背景がある程度読めてしまうだろうが、事件の背景や構成にトリック、交通事故の鑑定も含め、説得力はなかなかのものである。
小早川がひろこに惹かれていく過程の描写が少ないところが弱点ではあるが、ひろこが小早川を拒否する背景なども含め、ミステリと恋愛ものを絡めた作品としてはそれなりに上手く融合できた方ではないだろうか。
達者な仕上がりであり、完成度も高い。その分新人らしさがないところもあるが、それを欠点と言ってしまうのは、この作品に対しては酷だろう。横溝正史賞受賞作品の中でも上位にランキングされる一作である。
作者はこの後、『嫌われ松子の一生』がヒットして映画化・ドラマ化される。