平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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藤子・F・不二雄『大長編ドラえもん』第5巻(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集第3期第7回配本の一冊。大長編ドラえもんのうち「のび太と雲の王国」「のび太とブリキの迷宮」「のび太と夢幻三銃士」を収録。
のび太と雲の王国』は、短編「ドンジャラ村のホイ」「モアよドードーよ、永遠に」「さらばキー坊」のキャラクターが登場する懐かしさはあるものの、ドラえもんが狂ったり壊れたりと、ある意味悲しくなる作品。完結は後日という事情があったにせよ、自然保護の観点に力を入れすぎてしまったような作品。作者が言うとおり、描きにくかったのだろうなと思わせる。『のび太とブリキの迷宮』は設定が悪くないものの、本作でもドラえもんが壊されるし、最後はメカトピアが破壊される結末。この頃の藤子F作品は、メッセージ色が強く、娯楽作品を超えてしまった重さがあり、素直に楽しめない欠点がある。『のび太と夢幻三銃士』は、そのようなメッセージ色をすべて取り払い、夢の世界の中で繰り広げられる冒険ものである。最初から最後まで夢の中の世界というのはちょっと残念だが、舞台・のび太たちの活躍・ドラえもんの秘密道具がうまくかみ合った作品に仕上がっていると思う。特に最後のしずかのセリフは、その後ののび太としずかを暗示しているようで興味深い。