クレアが死んでいる (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-15 87分署シリーズ)
- 作者: エド・マクベイン,加島祥造
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/09
- メディア: 文庫
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1961年発表、87分署シリーズ第14作。1962年翻訳、1978年文庫化。
第二作『通り魔』で登場したバート・クリングの恋人、クレア・タウンゼンドが殺害されるというショッキングなスタートで始まる本作品。作者はこのシリーズの主人公は87分署の集団そのものであると考えており、元々『麻薬密売人』でスティーヴ・キャレラを死なす予定だったが、編集者との押し問答の末にストーリーを変えてしまった過去を持つ。そこで「キャレラをヒーローということができても、クレアがヒロインであると私を説得することはできないでしょう」ということで、クレアが死ぬストーリーを作ったという。ファンとしては迷惑な話だろうが、現実に有り得ることとして作者が書いたのだから仕方がない。
どうしても私情を挟むことになるのだから、恋人の殺害事件の捜査にたずさわることができるのだろうか、という疑問は多々あるのだが、クレアが隠していた秘密が明かされる過程も含め、スピーディーな展開は相変わらず。それにしても、事件の解決の虚しさって言ったらありゃしない。なんなんですか、この動機は、と言いたくなるぐらい。あまり後味の良い作品ではないが、これも警察小説を扱ううえでのシリーズの一コマなのだろう。