平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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高田郁『心星ひとつ―みをつくし料理帖』(ハルキ文庫)

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)

心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)

青物が思わしくない夏。馴染みの客、版元の坂村堂がつる屋に連れてきたのは、日本橋の旅籠「よし房」の店主・房八。六十半ばですでに連れ合いを亡くした房八は芳に惚れ、連日通うようになる。その頃澪は、江戸にはない生麩を自分で作ろうとしていたが、どうしてもうまくいかない。坂村堂の実家が、料理番付の行司役である料理屋「一柳」であることがわかる「青葉闇―しくじり生麩」。

又次が料理番を務める吉原廓、翁屋の楼主、伝右衛門が三方よしの日につる屋を訪れた。店を一軒押さえたので、吉原で「天満一兆庵」を再建しないか、との提案だった。さらに料理番付のライバルである登龍楼店主、采女宗馬からは、神田須田町の店を居抜きで売る、しかも奉公しているふきの弟健坊も移してよいとの提案である。わずか三十両で売るというその話に首をひねる周囲。二つの提案に悩む澪。甦るのは、「ひとは与えらた器より大きくなるのは難しい」という一柳店主・柳吾の言葉。「天つ瑞風―賄い三方よし」。

ぼやが続いた元飯田町。町年寄は、飲食を供する店は火の扱いを朝五つ(午前八時)から四つ(午前十時)に限るという申し入れをしてきた。昼と夜に火が使えないということは、料理屋にとって致命的。客足がどんどん落ちるなか、澪が考えた対策とは。一方、小松原(小野寺数馬)の妹である早帆が、澪のところへ料理を習いに。「時ならぬ花―お手軽割籠」。

数馬の母親である覚華院(里津)の使い・多浜重光がつる屋へやってきたため、澪を数馬の嫁に迎えるという話がつる屋の人々に知れることとなった。未だ姿を現さぬ息子佐兵衛と一緒になって天満一兆庵を再建してほしいと思っていた芳、澪を娘の生まれ変わりと思って大事に思う種市は苦悩する。そこへやってきた小松原、いや数馬。ついに数馬は澪へ「女房殿になるか」と声を掛けた。「心星ひとつ―あたり苧環」。

大好評シリーズ第六弾。2011年8月、書き下ろし。



今回はいつもの「澪の料理帖」以外に「みをつくし瓦版」がついている。「りうの質問箱」 やっぱり料理は自分で考えているんだね。だったら年二冊も仕方がないところか。

それにしても内容は急展開の嵐(正しくない日本語だ)。「青葉闇―しくじり生麩」みたいに珍しくしくじる話があって、今回は平穏に終わるかと思ったら、そこから先は色々なことが起こる、起こる。それにしても、料理を作らない澪なんて想像もつかないし、魅力が半減するということを、周囲は誰も気付かないのかね。まあ、江戸時代にそんなことを言っても無理か。

それにしても、この状態で半年後までじらされるのは嫌だなあ。