平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ラルフ・ヤング『クロスファイア』(文藝春秋)

クロスファイア

クロスファイア

何げなくかけた一本の電話が、平凡な助教授だったクリストファー・ベントンの人生を大きく狂わせることになった。彼は交通事故で死んだ友人の勤め先に電話した途端、いきなり殺し屋に襲われる。かろうじて身をかわした彼に、徐々に事態がのみ込めてくる。彼は秘密を知る男と勘違いされたのだ、過激派にNATOの核ミサイルを奪う計画があり、それにNATOの大物がからんでいるという……。彼らの狙いは何か? 本当にそれは核装備されているのか? なぜNATOが手を貸すのか?

謎は次第に深まり、ベントンはすさまじい状況に追い込まれてゆく。(帯より引用)

1986年、第4回サントリーミステリー大賞佳作賞受賞。11月単行本化。海外から初入選を果たした話題作。



サントリーミステリー大賞の特徴には、海外からの公募があった。このミスのどこかに書かれていた記憶があるのだが、年間4〜5作程度の応募があったらしい。正確にはエージェントに手配して作品を募ったようだが。本作品は初めて入選した作品。

作者は1942年ニューヨーク生まれ。1971年にミシガン州立大学博士課程卒。専攻は歴史学政治学、地理学。その後、ロンドン大学ブレーメン大学での講師を経て、執筆当時はフィラデルフィアで古書、稀観本を扱う書籍商を営んでいる。本作品が処女作。

フィラデルフィアで事件は始まり、その後はニューヨーク、ロンドン、ハンブルク、ウェッツェン、ブレーメン、ワシントン、コペンハーゲンなどアメリカ・ヨーロッパを巻き込んだ大事件に発展する。過激派と帯の粗筋には書かれているが、一応核非装備、反核を掲げている団体である。核の恐ろしさを知らしめ、核を無くすために核ミサイルを奪うという計画は、執筆当時の時代性を感じさせるところがある。今だったらここまでの過激な作戦を立てずとも、ホームページなどで舞台裏をさらせば十分目的を達成させられそうなのでやや違和感が残るが、それは仕方がないか。

ということで舞台や背景だけを考えれば「大型サスペンス」となるのだが、その内容はあまりにも素人くさい。何の取り柄もない平凡な助教授であるベントンがプロの殺し屋は集団の手から逃れ続けるくだりは、はっきり言ってご都合主義を超えた情けなさがある。その後の追う側と追われる側のドタバタぶりも、裏に隠された壮大な計画と比較すればあまりにもお粗末。一歩間違えば、世界は破滅している。当然シミュレーションは繰り返したんだろうが、得られた成果と比較すれば危険度が高すぎると思うのだが。その辺に説得力を感じさせることができれば、もう少し評価は異なったかもしれない。

サントリーミステリー大賞といえば都筑道夫が選評で、国内作品と比べて海外作品が大人の作品であるといったようなことを毎回のように書いていた記憶があるが、この作品に限っていえばその評は的外れ。いや、本作品でそのようなことを言ったかどうかは覚えていないけれど。グダグダ感の強いサスペンスであり、佳作どころかよく最終選考まで残ったと思わせた作品。まさか翻訳料と公募依頼料を稼ぐために単行本で出したわけじゃないだろうな。

のんびりやっているサンミス関連作品読破もマジック8。まだまだ先は長い。