- 作者: 大下宇陀児
- 出版社/メーカー: 春陽堂文庫出版
- 発売日: 1961
- メディア: 文庫
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数年ぶりに外国から帰ってきた青年は盲人となっていた。しかも性格が変わってしまい、資産家である母や弟、そして婚約者も寄せ付けない。何か秘密があるのではと疑う弟と婚約者であったが、ついに殺人事件が発生した。1930年作の短編「たそがれの怪人」。
32歳で役所の官制が廃止となり、そのまま無職となった小田切は千葉の勝浦に旅行へ出かけるが、列車で男装した女性に目を留める。彼女は誰かから逃げるため、列車から飛び降りた。短編「画家の娘」。
1951年4月刊行。1976年9月、第8刷。
古本で買ったのか、新刊で買ったのかが覚えていない。多分近所にあった本屋が古い春陽文庫を売れないまま置いていた(『鉄鎖殺人事件』などもそこで買ったし)から、そこで買ったものだろう。その本屋には大分お世話になったが、数年前に帰った時にはつぶれていた。残念なことである。部屋を片付けていたら、昔買った本が出てきたので、懐かしくなって読んでみた。
大下宇陀児といえば『虚像』などの作品を思い浮かべるが、本作品集は通俗作品ばかりを集めたもの。短編「宙に浮く首」ではその名の通り宙に浮いている首を見た、という目撃証言が出てくるが、そのトリックについていえばはっきり言って残念もの。しかもその謎は序盤で解けてしまうし、以後はタイトルとは関係ない話が続く。事件の動機は、執筆当時の時代背景を物語っている。これ、現代じゃ復刻するのは難しそう。
短編「たそがれの怪人」は、いくら何でもそれはないだろう、と言いたくなるぐらいの設定。短編「画家の娘」はラストの盛り下がりが残念な作品。
どれも書き飛ばしたとしか思えないような出来の作品ばかり。人気があって、よっぽど忙しかったのだろうか。