
- 作者: 岡嶋二人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/02/15
- メディア: 文庫
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テレビ番組で人生相談を受け持っている小説家・辻村園子のところへ担当編集者である入江伸子は原稿をもらいに来たのだが、そこへ赤ん坊を抱えた古橋牧子が押し掛けてきた。赤ん坊の父親は結婚する気が全くなく、すでに別の女を作っている。翌日、牧子が殺害されたが、赤ん坊は行方不明になっていた。「こっちむいてエンジェル」。
入江伸子は、交通事故死した前担当者の「舞台考証」という雑誌のコーナーを引き継ぐこととなった。協力をしてくれている旅行会社へ挨拶に行くと、担当である女性課長は会議中に倒れ、病院に運ばれていた。「眠ってサヨナラ」。
女性1人男性2人の売れないコーラスグループ「スリー・パーセント」。数日前、解散してデュエットでやりたいと言い出したところを説得している状況だが、すでにやる気が見られない。ある日、マネージャー木暮が拳銃を持った男に襲われた。思い当たる節は全くなかった。「バッド・チューニング」。
渋沢哲次のところへ今年の年賀状が届いたのは1月5日。初出勤では会社の皆がよそよそしく、誰も声をかけてこない。そして課長からは叱責を受け、退職を迫られる。無修正ポルノ雑誌の通信販売広告の申込先に、渋沢の名前と住所があったのだ。「遅れてきた年賀状」。
しつこい女性と別れ話を持ち出したドライブ。雨の中で道に迷い、正面から来た車に激突。運転手の男は、ぶつかった拍子に同乗者の女性が死んだと告げてきた。やくざの情婦と逃げ出してきたところだったという男に脅迫され、女性の死体を捨ててくる羽目になった。「迷い道」。
警備員二人が詰めている深夜のビルで、残業をしていた社員が殺された。そのビルは管理が万全であり、誰にも知られず出入りすることができないように思われた。「密室の抜け穴」。
映像会社が管理する撮影用カメラが、女性の遺体とともに島根県の湖から引き上げられた。記録簿を見ると、そのカメラは東北にいるロケ班が使っているはずであった。「アウト・フォーカス」。
作家岡嶋二人のところに編集者の滝口は、新聞記事を題材にした短編ミステリを競作させるという依頼をした。ところが、全く同じ企画を岡嶋二人はすでに『小説現代』から受けていた。しかも新聞記事も全く同じものだった。重なる依頼の裏側にあったものは何か。「ダブル・プロット」。
1989年9月に講談社文庫から出版された短編集『記録された殺人』に、単行本未収録だった「こっちむいてエンジェル」「眠ってサヨナラ」「ダブル・プロット」を追加して刊行。岡嶋二人、最後の最新刊。
2011年にもなって、まさか岡嶋二人の最新刊が読めるとは思わなかった。数多く読んでいる作家ではないが、こういうケースなら思わず読みたくなってしまう。そもそも、『記録された殺人』自体読んでいるわけではないので、全て新鮮な気持ちで読むことができた。
久しぶりに岡嶋二人の作品を読んでみると、まあ筆達者なこと、といいたくなる。リーダビリティの高さは、当時の長編と変わらず。井上夢人長編と比べると、何も考えずにグイグイ読み進めることができるぞ(苦笑)。トリックやアイディアとしてはありふれたものが多い。「送れてきた年賀状」なんか、すぐに仕掛けはわかっただろう。それでも見せ方や料理の仕方が巧いから、作品に引き込まれてしまう。
ただ追加された作品について言えば、今まで収録されなかったのも仕方がないかな、といったところか。「こっちむいてエンジェル」「眠ってサヨナラ」は『月刊カドカワ』でシリーズものにする予定が二編で終わってしまったものだし、「ダブル・プロット」は楽屋落ちに近い。それでも岡嶋二人だから読ませてしまう、といったところはある。
とりあえず、単行本未収録作品が収録されたのだから、それでいいや、という作品集。読んでみて損はないけれど。
音楽だと、ケンカ別れしても当たり前のように再結成するバンドがあるけれど、この二人も一作品限定でいいから再結成しないかな。久しぶりにちょっとやってみようか、みたいな軽いノリでいいからさ。